• 家の光協会が開催する
  • さまざまなコンテストや
  • 地域に読書の輪を広げる
  • ための講座等を紹介します

一般社団法人 家の光協会は、
JAグループの出版文化団体です。

『人生の一冊』 _読書エッセイ

『人生の一冊』

佳作 『人生の一冊』 安田愛  「素直だねぇ。」  どこに行っても誰と会っても必ず言われる、私の唯一の誉め言葉。「意地悪いようなところ一つもないわ~」これもだいたい後に続く。  もちろん、嬉しくないわけではない。けれど、 …

『天狗の血筋』

佳作 『天狗の血筋』 鹿戸あゆみ  雨の日、野良仕事のできない祖母はゆっくりと朝寝をした。そんなとき祖母は、となりに一緒に寝ていた幼い私にむかって「うちの家には、東ノ谷の天狗の血が混じっとる。でも秘密やど」と真剣な顔でよ …

『雨の日』

佳作 『雨の日』 萩谷好美  私は雨の日が好きだ。雨の日は大体、家にこもって、ふかふかの蒸しパンを口にほおばり、ゆっくり本を読んで過ごす。そうして過ごす時間は、静かにゆっくりと流れていき、私は落ち着く、ほっこり、おだやか …

『長すぎるお礼状』

佳作 『長すぎるお礼状』 岡本悠花  2023年の7月に5年付き合った彼と結婚をした。  結婚式は挙げないし、私の苗字も変わらない(どちらの苗字に変えるか、ジャンケンで決めて私が勝った)ため、仕事の手続き上必要な相手と、 …

『グレーからの新芽』

佳作 『グレーからの新芽』 山本萌  小学校に上がるまで、文字が読めず書けず。幼稚園では、協調性がまるでなく。自分の名前は何度教えられてもうまく書けず。  そんな調子なので、ある時は母に連れられ病院で検査やカウンセラーを …

『友達文庫』

佳作 『友達文庫』 植田郁男  かれこれ四十年も前のことである。中学二年生の春。校庭をぐるりと巡る櫻は、ほとんど散って、葉桜に変容を遂げようとしていた。  窓際から二列目の一番後ろが、私の新しい席になった。その隣にいたの …

『読書とわたしと家族』

佳作 『読書とわたしと家族』 根本祐一  「本を読んでいるお父さんの後ろ姿が嫌いだった」、「お父さんの部屋には入りにくかった。わたしの誕生日祝に集まったはずの娘たちから思わぬ言葉を聞くことになる。「もっと遊んでほしかった …

『父のインクつぼ』

優秀賞 『父のインクつぼ』 高島緑  私が幼少期を過ごした昭和三十年代、高知県境に近い故郷奥伊予の山村には本屋など一軒もなく、絵本を買って貰った記憶もない。  初めて本というものを手にしたのは五歳くらいの時だったと思う。 …

『陽光あふれて』

優秀賞 『陽光あふれて』 金子美知子  車窓に相模さがみ湾の海が広がった。「わあっ!」と声が出そうになる。見慣れている海が今までになく透明な群青に見えた。柔らかな晩秋の日差しに光のかけらがキラキラ跳ねる。「なんて鮮やかな …

『やさしさの点』

優秀賞 『やさしさの点』 見澤富子  夜十時。リビングでプツンプツンと点字を打つ。目が見えない母の日課だ。物心つく頃にはすでに母は目が見えなかった。家の中は手すりだらけで、外を歩くときも白杖が欠かせない。  私がお腹にい …

 

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