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『叶えられるかな、叶えていたいな』 _読書エッセイ

佳作

『叶えられるかな、叶えていたいな』

森川夏帆・愛媛県・21歳

 夢がひとつある。

 図書館をつくりたい。

 図書館をつくりたいのだ。これは、将来の話である。仕事がひと段落ついて(まだ就職もしていないが)、第二の人生が始まる頃。私たちの世代になるともう、「定年」という概念が存在するのか分からないけれど、六十代のうちには叶えたい。故郷で、本と人に囲まれて生きていけたら素敵だな、というのは、私の密かな願いであり、企みである。

 図書館といえばまず必要なのは、言うまでもなく、本だ。本の入手については、何とかなるだろう。学校帰りに書店に寄っては、毎回本を買ってしまう私のことだ。四十年後にはきっと、たくさんの本が手元にあるはず。たくさんの本棚を用意して、作家名順に本を並べたり、「今月のおすすめ本コーナー」を企画したりしたい。 それにしても、毎月、アルバイト代の多くが本に変身している気がする。この調子だとゆくゆくは、部屋の壁が一面、本で埋め尽くされることになるだろう。楽しみだけど床が抜けないか心配だ。

 図書館には、カフェを併設したいという野望もある。読書とお茶は最高のコンビだ。読書しながらおやつを食べたり、あるいは、友だちと集まってお茶を飲みながら午後のひとときを過ごしたり、なんていうのもいい。最近読んで面白かった本をおすすめし合ったりできる場所になったら嬉しい。ところで、現在私は、「読書に合うお菓子」を探している。今のところ第一位は、金平糖だ。手が汚れないのでページめくりに支障が出ない。口の中でコロコロ転がりながら溶けていくので、本とお菓子を行ったり来たりしなくてよい。なにより金平糖って、見た目が可愛くて美味しい。いろいろ試した結果、金平糖が一番いい、という結論に至った。他に、読書に合うお菓子があれば、ぜひ教えていただきたい。

 話を戻そう。図書館や書店に行くと、どの本を選ぼうか迷ってしまうというのは、人類の悩みの種である。もちろん、迷いに迷っている時間はとっても楽しいのだけどね。たくさんあって、「私を読んで」「僕を選んで」って、もしかして私、モテてる…?そんな感覚に陥る人も、いると思う(え、いない?)。

 そんな、どの本を選んだらいいの~?と迷える時には、本の帯やポップを参考にすることが多い。ってことで、作っちゃおう☆

 ふと小学生の頃のことを思い出した。家がリフォームされて初めて「自分の部屋」を手に入れた私は、本棚に本の数々を並べて、図書館をつくったのだった。そして本の間には、本の紹介文を書いた小さな紙を挟んでおく。本選びのお助けになる。もしくは、本のしおりとしての役割も果たす。…そういうのは建前で、私が書きたかっただけだ。好きな本の良さを語りたい!あわよくば読んでもらって、感想を言い合いたい!そういう気持ちからできたものである。私の図書館に付き合ってくれた妹たち…。優しすぎる。感謝。

「図書館をつくる」というひとつの計画を立てると、糸で繋がれたようにほかのいろんなアイデアが一緒に飛び出してくる。小学生向け、子育てをしている方向け、といったように毎週テーマを決めて読み聞かせを開催したり、将来の私は教員免許を取得しているはずなので地元の子どもたちが通えるような塾をときどき開いて、気軽に勉強できる場を設けたりしたい。できることなら。

 そして、大切なことは、地元の人たちとの繋がりである。わたしの地元に住む人たちはみんな優しくて素敵な方ばかりだ。地元に住む人たちと、地元のことを大切にしたいと思う。図書館をつくりたい。これは私の夢であるが、地域の人から愛されないと、実現されないのだ。このことを忘れてはならない。また、今できることを精一杯しておくことも重要だ。真剣に勉強すること、人との出会いと、今いる友だちを大切にすること、たくさんの経験を積んでおくことが、きっとこれからの自分をつくるから。

 図書館がうまくいって、私が八十歳を超えたら。その頃から、図書館から本屋さんにシフトチェンジしようかな、と考えている。ずっと大切にしてくれる人のそばに、本を置いていただきたい。来てくれた人に、一回につき一冊、好きな本を選んでもらってプレゼントする。そんな本屋さんだ。果たして、何年かかるだろうか。最後の一冊が誰かの手元に渡る日、私は店仕舞いをするだろう。

 でもきっと、手元に本がなくなっても、生きている限り、本と離れた生活はできないに決まっている。新しいお話に出会い続けながら、暮らしていける。

 そういう人生がいい。

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