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青春の一ページを _読書エッセイ

佳作

青春の一ページを

鞠子早和子・沖縄県・17歳

 私が中学生最後の年に、学級文庫ならぬ二人文庫というものを作ったことがある。二人で作ったから二人文庫。そのままでネーミングセンスが少し欠けた名前だけど、私はけっこう気に入っていた。

 私と一緒に二人文庫を作ったのは、それまであまり接点のなかった大人しい女の子だ。でも、休み時間のたびに彼女が開く本の中には私が読んだものや読みたいと思っているものが多くあって、少し気になっていた。彼女と本の貸し借りを始めたのは夏休みに入る少し前だった。海外の恋愛小説の話題で盛り上がったのがきっかけだったと思う。貸し借りを始めてわりとすぐに通話アプリで本の感想を語り合うようになり、二人文庫を作ることになった。

 二人文庫の制度はシンプルだ。月に一度、二人で読みたい本を考えて割り勘でその本を買う。じゃんけんで勝った方が先に、負けた方はその後に読み、読み終わったら教室の空いているロッカーの中に入れておく。中学生の少ないお小遣いでは買えなかったハードカバーもお金を出し合えば買えたし、本の好みが似ていたからけんかになることもなくて、けっこうよくできた制度だったんじゃないかと思う。

 受験生だったくせに、私達はよく本を読んだ。二人文庫以外にもそれぞれ本を買って貸し借りを続けた。推理小説の真似をして暗号で書いた手紙を本に挟んで文通したこともある。あの頃の私達は、ただ純粋に本の世界を楽しんでいた。勉強のためじゃなくて自分の楽しみのためだけに本を買う、そんな本しか知らなかった。

 二人文庫の本をどうするかで少し揉めたのは、卒業の少し前だ。話し合った挙げ句、学校の図書室に寄贈することにした。それが、自分達の利益のことには頓着しない彼女と私の、卒業の仕方だった。

 私が中学生時代を思い出す時は必ず彼女と二人文庫がセットで付いて来る。休み時間を共に過ごす友達はそれぞれ別にいたし、卒業に書いてくれたメッセージも一番短かったくせに、私の中学校の思い出の、やたらと濃くて真ん中に近い部分に彼女がいるのだ。いや、彼女が入り込んでくるのは思い出の中だけではない。本屋さんに行くと、今でもつい「二人文庫」候補の本を探してしまったりする。彼女もそうだろうか。もしかしたら、一生の友達かもしれない。

 もし、地元で子供を生んだらあの中学校に通わせよう。二人文庫の本が、図書室にまだ残っているといい。私達の青春を、私の子供がいつか手に取って読むかもしれないと思うとわくわくするから。

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